近年、介護業界はこれまでにない人手不足の問題に直面しています。
厚生労働省の調べによると、2019年度時点で必要な介護職員数があ211万人で、
2025年度には243万人と2019年度に比べて32万人も不足する見込みです。
更に2040年度には280万人にもなり69万人もの介護職員が現在よりも必要になると予測されています。
介護職員数の予想不足数
そこで、厚生労働省は将来の介護現場の人手不足を見込み、2023年7月、外国人材の訪問介護への解禁について検討を開始しました。
本記事では、訪問介護業務が解禁になった場合のニーズや課題をご紹介していきます。
参考:第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について
近年、介護施設では、外国人採用のニーズが高まっています。
令和4年12月時点での介護施設で就労する特定技能外国人は、16,081人となっており、
昨年比約3倍にも増加しています。
介護施設で働く特定技能外国人の推移
介護施設にとって、採用は単なる人手不足解消だけではありません。
例えば、外国人を採用し、利用者あたりに多くのスタッフを割り当てられることで、施設のサービス向上につなり、利用者の満足度を上げ、将来的な事業の継続につながるという面も考えられます。
外国人スタッフを採用した施設の多くは日本人の採用に苦労しており、事業を継続し、
職員の雇用を維持するためにも外国人採用に至ったケースも少なくありません。
また、現在は人手も充足しており、採用には困っていないが、将来の介護分野における人手不足な環境を見越して、事前に手を打ったケースもあります。
介護施設にとって外国人の採用は、人手不足の解消だけでなく、サービス品質の維持・向上、事業の継続のために大切なことなのです。
現在従事可能な業務と課題
現在の特定技能制度において、外国人は身体介護等のほか、付随する支援業務に従事することが可能です。
しかし、現在の制度では訪問介護等の訪問系サービスにおける業務に従事することができず
訪問サービスを展開する介護施設からは、訪問介護でも特定技能外国人の受け入れができるよう、
業務範囲拡大のニーズが高まっています。
訪問介護での外国人採用解禁の可能性?
上記でもお伝えした通り、外国人材の訪問介護業務をめぐっては言語、文化、風習の違いへの対応の難しさから、
現在は利用者が入所や通院の介護施設などに限定されており、利用者の自宅等への訪問介護は許可されておりません。
しかし、人手不足に苦しむ訪問介護現場からは業務範囲の拡大を望む声もあがっており、
厚労省有職者会議では、2023年内に訪問会議解禁の可否も含め制度の見直しの方向性を示す考え
です。
訪問介護の業務
そもそも、訪問介護とは利用者の自宅に出向いて身体介護や生活支援を行うサービスを指します。
訪問介護での特定技能外国人受け入れが解禁された場合に想定される業務は以下です。
家事全般や各種身体介助などを1日に複数のご自宅に訪問するため、利用者様のご自宅までの移動手段として車やバイク、自転車などが多いようです。
訪問介護での受入課題
<求められる専門的知識・経験>
一般の介護施設では統一した介助のルールがあります。
一方、訪問介護は核ご利用者様の家庭のやり方に合わせる必要があります。
さらに、掃除、洗濯、調理などの家事援助も業務に含まれるため、家事が苦手な方にとっては、膨大な情報を覚える大変さもあります。
また、中には、医療的ケアが必要な利用者様もいます。
そのような方たちは在宅介護を選ぶというよりは、在宅介護を選ぶしかない状況です。
そのため、一般介護の知識や経験以外にも医療ケアなどの専門性を高める必要もあります。
<サポート環境の整備>
訪問介護では、基本的には1人で利用者様の自宅に訪問することが多いです。
そのため、外国人本人が行う介護や利用者様・家族とのコミュニケーションに問題はないかを第3者が判断することが難しいです。
一方、外国人にとっては、先輩社員に気軽に相談することが難しい環境ともいえます。
まとめ
介護分野の人材不足問題が続く中、外国人による訪問介護が解禁された場合、
訪問介護における人手不足は解消されるかもしれませんが、介護施設とは環境も状況も違うため、
どのようにサービス面を維持しつつ業務に取り組んでいくのかも大きな課題の1つとしてあげられるでしょう。
外国人本人が業務を1人で抱え込まないよう、本人の日本語能力や経験を考慮しながら、
先輩スタッフと相談がしやすい環境づくりや受入準備を検討する必要があります。