2025年3月11日に閣議決定された特定技能制度の分野別運用方針の改正により、これまで認められていなかった特定技能外国人による訪問系介護サービスへの従事が、一定の条件下で認められることとなりました。
これは介護人材の不足が深刻化する中、制度の柔軟性を高め、より実態に即した形で外国人材の活用を可能にする大きな一歩です。
訪問介護解禁の背景
これまで、訪問介護は「1対1でのサービス提供」や「利用者のプライベート空間への訪問」など、個別性が高く責任の重い業務であることから、外国人介護人材には従事が認められていませんでした。
しかし、厚生労働省が設置した「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」では、状況の改善に向けた議論が進められ、2023年6月の中間まとめにおいて、「一定の条件の下で訪問系サービスへの従事を認めるべき」との提言がなされました。
その背景には、訪問介護の有効求人倍率が14.14倍(2023年度時点)という深刻な人手不足があり、現場からは早期の制度改正が強く求められていたのです。
改正のポイント
今回の改正では、以下の要件を満たすことで、特定技能外国人が訪問系サービスに従事できるようになります。
従事可能な外国人材の条件
・介護職員初任者研修課程等を修了していること
・介護事業所等での実務経験が原則1年以上あること
受入れ事業所に求められる義務
1.業務の基本事項に関する研修の実施
2.訪問介護業務への従事初期には、責任者等による同行・訓練の実施
3.業務内容の丁寧な説明と本人の意向確認の上でのキャリアアップ計画の策定
4.ハラスメント防止措置(相談窓口の設置など)の整備
5.情報通信技術の活用を含めた緊急対応体制の構築
今後への期待と課題
今回の改正は、訪問介護の現場における人材不足を補うとともに、外国人介護人材の活躍の場をさらに広げることにつながります。
一方で、文化・言語的な配慮や、単独業務におけるリスク管理など、新たな課題への対応も必要です。
介護を受ける側・提供する側双方が安心してサービスを行えるよう、今後は制度運用の徹底と、現場への丁寧な支援が求められます。
まとめ
特定技能制度は、日本の人手不足を補う重要な枠組みとして制度的な進化を続けています。
今回の訪問介護への従事解禁は、介護分野におけるさらなる可能性を切り開くものであり、外国人材と共に築く共生社会の実現に向けた大きな一歩となるでしょう。